えきたび ~ローカル線を訪ねる鉄道旅~

ローカル線を旅して降りてきた駅についてを書いた紀行ブログです。基本的に写真は添えず、短めな文で綴っていきます。

菊水山駅 (神戸電鉄有馬線 - 兵庫県)

 神戸市の中心部三宮からほど近い新開地駅に降りた。神戸高速鉄道の駅である新開地駅は地下鉄みたいな地下駅である。東の方向からは阪急神戸線阪神本線。西の方向からは山陽電鉄線がやってくる。神戸高速鉄道は、かつてばらばらに位置していた各私鉄の神戸のターミナル駅を繋げるために設立された会社であり、路線を所有しているだけの鉄道で、車両は保有していない。つまり各私鉄の電車が線路を走っている。
 この新開地では北の方向に向かって別線が伸びている。神戸電鉄の電車が乗り入れてくる線である。私は乗換通路を通って神戸電鉄の電車が待つホームに向かった。
 白い車体に窓枠のところが赤い通勤型電車は新開地を出ると、神戸電鉄の戸籍上の起点である湊川駅を過ぎ、やがて地上に出た。線路はぐいぐいと上り勾配で六甲山地に入っていく。後方に見える神戸の街並みと海がどんどん遠ざかっていく。

 登山電車の様相を見せ始めた電車は、山の切通しのような所をレール音を軋ませながら走っていく。いつしか無人の山地風景になり、ゆっくりと電車は狭いホームの無人駅に停車した。
 「菊水山」と書かれた駅名標。二人並んで歩くのがやっとな幅のホーム。線路は複線なのでホームは二つあるが、斜面に横付けされた下り(有馬温泉方面)電車のホームからは構内踏切を渡って出入口のある上り(新開地方面)ホームに出る。
 駅舎はなく、駅を出ると下方向に階段が伸びているだけで、駅前広場のようなものはない。つまり駅が斜面の中腹にあるのだ。階段のまわりは木が生い茂っているだけで建物はなく、下の方から川のせせらぎが聞こえてきた。
 とりあえず階段を下りてみたが、特に何かあるわけでもなく、駅に戻ってきた。菊水山駅は停まる電車より通過する電車の方が多い。山を越えた向こうは鈴蘭台などの神戸のニュータウンが広がっているので電車の本数はそれなりにあり、時折レールを軋ませる音とモーター音の唸りと共に電車が通過していく。しかし、電車が通り過ぎていくと、聞こえてくるのは川のせせらぎだけ。私はのんびりと鈴蘭台方面の電車を待った。